口腔外科
歯科口腔外科は、歯や口腔内だけでなく、顎や顔面など口周りの疾患を専門的に診断・治療する診療科です。親知らずの抜歯や口内炎、顎関節症、舌の異常、歯の破折、唇の外傷など、口腔内と顔面領域のトラブルを診療します。
口腔外科の対象となる症状
- 歯の痛み
- 歯ぐきの腫れ
- 顔の腫れ
- 親知らずの痛み
- 歯が折れた
- 口の中の傷
- 歯のぐらつき
- 顎関節の痛み
- 歯がグラグラする
- 味覚がおかしい
- 噛み合わせが悪い
親知らずの抜歯
親知らずとは
親知らずは、通常成人になる頃に生えてくる第三大臼歯であり、口内の奥側に位置しています。しかし、その特殊な形状と位置から、歯列の乱れや炎症などの問題を引き起こすことがあります。親知らずの問題は、痛みや腫れ、口の開け閉めの制限などの症状として現れる場合があります。また、周囲の歯に圧迫をかけ、歯周病やむし歯の原因にもなり得ます。そのため、個別の状況に基づいて、親知らずの抜歯が必要となる場合もあります。
親知らずが痛くなってしまったら
親知らずが痛くなってしまった場合、なるべく早く歯科医院を受診しましょう。親知らずの痛みや腫れの原因は、親知らずに食べ物が挟まっている、親知らずが横向きや斜めに生えている、周辺の歯茎が歯周炎になっている、むし歯が進行しているなどが挙げられます。
歯茎の腫れや口を開けにくい、頬に触れると痛む、腫れているなどの症状がある場合は親知らずの周囲の組織に何らかの問題が生じている可能性があります。親知らずが正常に生えてきている場合でも、狭い場所に位置していたり、他の歯と干渉していることが原因で痛みが発生することがあるため、このような症状がある場合はまずはご相談ください。
親知らずの抜歯後の注意点
親知らずを抜歯後約30分はガーゼを強く咬む
抜歯後約30分はガーゼを強く咬んで圧迫止血を行いましょう。出血が止まらない場合は、再度ガーゼを咬んで様子を見ます。唾液に少量の血が混じることは問題ありません。しかし、出血が長時間続く場合はご連絡ください。
麻酔がきれるまでは食事に注意
親知らずの抜歯後は麻酔が効いているため、熱いものや刺激のあるものを避けましょう。無感覚のため、やけどや頬や舌の咬傷に気づかないことがあります。口の感覚が戻るまでは食事は控え、安静にしましょう。
抜歯後2~3日は強いうがいを避ける
抜歯後2〜3日間は強いうがいを避けましょう。また、食べ物が抜歯した箇所に詰まっても舌や指で取り除くことは避けてください。抜歯した箇所を過度に触れると、正常な治癒が妨げられ、ドライソケット(抜歯術後痛)と呼ばれる状態になる可能性があります。
1週間程度は抜歯した箇所の歯磨きは避ける
抜歯後約1週間は抜歯した箇所の歯磨きを避けましょう。ただし、他の歯は通常通り磨くことが大切です。口内を清潔に保つためにも歯磨きは欠かさず行いましょう。
身体を温める行為を避ける
飲酒、長風呂、激しい運動など血流を促す行為は避けましょう。血流が良くなると痛みや腫れを引き起こす可能性があります。
抗生物質を飲みきる
処方された抗生物質は指示通りに飲みきりましょう。痛みがなくなっても、感染予防のために抗生物質をきちんと服用する必要があります。
患部を冷やしすぎない
患部を冷やしすぎないように注意しましょう。抜歯後に適度に冷やすことで痛みを軽減できますが、極端に冷やしすぎると血行不良を引き起こし、逆効果になることがあります。
ドライマウス(口腔乾燥症)
ドライマウスとは
ドライマウスは、口の中が乾燥した状態を指します。通常、1日あたりに分泌される唾液の量は約1〜1.5ℓ程度ですが、様々な原因によって唾液の分泌が減少すると、口内の潤いが不足して乾燥感が生じます。唾液は口内の健康を保つ上で重要な役割を果たしており、抗菌作用や自浄作用によってむし歯や歯周病の予防にも関与しています。そのため、唾液不足はむし歯や歯周病を引き起こすリスクを高めるだけでなく、口臭や粘膜の感染症、味覚障害、嚥下障害などの問題を引き起こす可能性もあります。適切なケアと予防対策を行うことが、ドライマウスを防ぐために重要です。
ドライマウスの原因
ドライマウスの原因は多岐にわたります。一般的な原因には、特定の薬物(抗うつ薬や抗ヒスタミン薬など)、他の健康問題(Sjögren症候群や糖尿病)、放射線治療、ストレス、加齢、唾液腺の障害、特定の疾患や感染症、口呼吸などが挙げられます。これらの要因が唾液の分泌を減少させ、口内の乾燥症状を引き起こすことがあります。原因を特定し、適切な対策や治療を行うことが、ドライマウスの改善に重要です。
このような症状があればご相談下さい
以下は、ドライマウスの代表的な症状です。
- 口の中が乾燥している感じがする
- 唾液の量が減少し、口内が潤いに欠ける
- 唾液不足により口や唇がカサつく
- 食べ物を噛む・飲み込む際に不快感を伴う
- 味覚が鈍くなることがある
- 口臭が強くなる
- 口腔内の粘膜が炎症を起こすことがある
- 歯の表面が粘着性を持ち、歯垢(プラーク)が付きやすくなる
- むし歯や歯周病にかかりやすくなる
- 嚥下障害(飲み込む際の困難)が発生する可能性がある
- 唾液の不足により、言葉を発しにくくなることがある
これらの症状がある場合は、ドライマウスの可能性が考えられるため、当院までご相談ください。
顎関節症
顎関節症は、顎の関節や噛む筋肉に痛みがある、口が開きづらい、音がするといった3つの症状が現れる病気です。いずれか1つでも現れた場合、顎関節症と診断されます。顎関節症は珍しい病気ではなく、一生のうちで2人に1人が経験すると言われています。命には関わりませんが、進行すると日常生活に支障をきたすことがあるため早めに治療を始めることが大切です。
自然に症状が改善する場合もありますが、放置すると症状が悪化する可能性があります。治療期間は顎関節症の重症度によって異なりますが、一般的には1ヶ月から数ヶ月程度です。顎関節症は、日常生活の癖などに関連していることが多いため、患者様自身が注意を払うことも重要です。
顎関節症は自然と改善する場合も多く、顎関節への過度な負荷を避けるだけでも改善することは珍しくありません。改善が見られない場合や症状が悪化する場合は、早めにご相談ください。
顎関節症の治療法
生活改善
顎関節症の原因となる生活習慣について、意識して改善していただくことが重要です。以下の点に気をつけましょう。
- 無理に上下の歯を合わせたり、食いしばったりしない
- ストレスを発散する方法を見つけて実践する
- 頬杖やうつぶせ寝などの姿勢を避ける
- 片側だけで食べ物を噛む「片噛み」をしない
- 抜けた歯を放置せず、歯医者で治療を受ける
- 硬い食べ物や長時間の咀嚼を避ける
- あくびのときは大きく口を開け過ぎない
マウスピース治療(スプリント療法)
マウスピース治療(スプリント療法)は、眠っている間の歯ぎしりや食いしばりによる過剰な筋肉の緊張や顎関節への負担を軽減するために、スプリントと呼ばれる特殊なマウスピースを使用する治療方法です。スプリントは保険診療で作製できます。
噛み合わせの治療
噛み合わせが合っていない場合は、特定の歯に大きな負担がかかることで顎関節症のリスクが高まります。また、合わない詰め物や被せ物も噛み合わせに影響を与えるため、必要に応じて作り直します。
噛み合わせ全体に問題がある場合には、矯正治療によって噛み合わせを整えることも検討しましょう。
歯ぎしり・食いしばりについて
歯や周囲の骨は、長時間の力が加わる方が、一度に強く噛むよりもダメージを受けやすいです。つまり、歯ぎしりや食いしばりを習慣的に行うと、歯が摩耗や欠け、寿命が短くなります。近年の研究では、これらの習慣が歯周病の進行を促進することも示されています。
さらに、顎関節症が発生すると、痛みや頭痛、耳鳴り、肩こり、めまい、集中力低下などの不調を引き起こすこともあります。歯ぎしりや食いしばりは自覚しにくいですが、当院では綿密な検査で状態を確認します。